tezuka
手塚治虫
エッセイ
- 半蔵門病院で病に倒れてからも, 創作への意欲, 情熱は凄まじいものがあり, 手術し, 入院中もマンガを書き続ける鬼気迫るものがあった.
- 人間がどのように進化しようと物質文明が進もうと自然の一部であることに変わりはないし, どんな科学の進歩も自然を否定することはできない.
- 鉄腕アトムはたとえロボットの激しい戦いを描いていても自然に根ざした "生命の尊厳" を常にテーマにしている.
- 鉄腕アトムが未来の世界は技術革新によって繁栄し, 幸福を生むというビジョンを掲げているように思われレイルがそうではない. 自然や人間性を置き忘れてひたすら進歩のみを目指して突っ走る科学技術がどんな深い亀裂や歪みを社会にもたらし, 差別を生み, 人間性や生命あるものを無惨に傷つけていくかを描いている.
- アトムは自分で考えることもでき, 感情があるロボット. アトムが人間らしくなりたいと学校に通うところを描いたが計算問題は瞬時にしてできてしまうし, 運動能力は比べようもない. アトムは疎外感を感じてしまう.
- 下等な動物でいた方がもっと楽に生きられ, 楽に死ねる.
- アトムは信念を持って行動し, 決して諦めたりしない. 時にはどう考えても勝ち目がなさそうな相手にもぶつかっていく.
- 一見平和な体制社会の中で日々を安楽に生き延びるのみの処世術が大人ばかりか子供の内面にまで根を下ろしている. たとえ, どんな状況にあっても, 明日へ夢をつなげていくための活力や理想を育むことが我々大人の責任.
- 「男のくせにだらしない.」なんてことは言わずに僕を怒ったり, 叱ったりしないで「辛かっただろうね. がまん. がまんしなさい.」といってひたすら我慢というものを教えてくれた.
- 父は気まぐれでわがままな亭主関白だった. 母はひたすら忍従の古いタイプの女だった. 何を言われようと文句一つ言わずにじっと耐えていじめられっ子の僕に対する「がまんしなさい.」
- 押し付けがましく言っても子供は言うことを聞かない.
- 人はただ命が助かって寿命が延びただけでは "生きている." とは言えない. 老人にもいわば "生きがい" がなくては生きる気力が湧いてこない. せっかく医療の進歩によって生き延びることができたとしても, かえって辛い思いや苦しい思いをさせることになる.
- 一本のケヤキの木が伐り倒されることになり, その木とともに育ってきたある老人が何とか建築を食い止めようとするが, 果たせず, 明日には伐り倒されると言う最後の夜, ケヤキと酒盛りした後, その枝で首吊り自殺を図ります. それをブラックジャックが手術して助けるのですが, もはや老人には生きがいがない. これで人助けをしたことにはならない. 物語としては結局, その老人が可愛がっていたケヤキの種の子どもで生きていく力を取り戻す.
- カタログ文化に慣らされた若い人たちは, 情報やデータをナマのまま受け取って咀嚼しようとしない.
- 昔は友達に面白いと言われるのが無上の喜びで本当に純粋な気持ちでふざけていた.
- 僕の人生ドラマというものがあるところで終わったら取り替えがきいて, また別のことを始めるんじゃないかという妙な錯覚に陥る時がある.だから, 割に体を粗末に扱ってしまう. どうせこの体は使い捨てで, 死んでしまえばこんなものいらないんだなあ, などと思う. この発想の底に次に新しいものを買ってまた使えばいいやってことがあったりする.
- 地球の危機という現実を前にして, たとえ, 未来予測が大変暗い不安な材料を排除するように現実に心掛けていればいい.
- 馬鹿馬鹿しく思えてしまう忙しさを何とかしたい. 一見無駄なこと, 余分なこと, はみ出しているようなことをどんどんやってみるゆとりが欲しい.
- 無駄な遠回り, 道草を許さない社会はどう考えても先に豊かさは見えない. 合理主義や生産至上主義は結局は会社を疲弊させてしまう. みずみずしい感性や独創性をもった子供たちが育っていくはずがないからです.